旅の最後はとっておき。
今日から、本当の意味で一人旅が始まる。
私は朝8時の飛行機でアテネに、友人は23時の飛行機でバンコクへ行く。
朝6時、友人が見送りをしてくれるというので、一緒にシャトルバスに乗って空港へ向かった。
ラッシュ前だったので20分足らずで到着した。
これなら旅の思い出を振り返りつつ、少しはまったりできそうだ。
チェックインを済ましてしまおうと列に並んだ。そのとき。
あ、パスポートがない。
パスポートがぁ、な〜い!
振り返るまでもないっ。あのときだっ。あそこだ〜。
そう、私は盗難届にうかれて、
パスポートを返してもらうのを忘れてしまったのである。
あぁもう、しまいだ。
今後の予約が全部キャンセル…?
顔面が蒼白になっていくのを感じた。
が、このときの私は1人じゃなかった!
友人がすぐに警察署へ行こうと、ふたりタクシーへ乗り込んだ。
(そっか、間に合うかもしれない?!)
そーなってくると心境は変化するもので、今度は間に合わせたいって気持ちになってきた。
この20分の移動は、運転手をせっつきながら、神に祈りを捧げた。
タクシーにもかかわらず、警察署の前まで行ってくれない。
って、どーいう了見じゃー。
ここはどこですか?というような場所で降ろされた。
ほんと、友人がいなかったらアウトですよ。
ということで、友人を先頭にスルタンアフメットの街を走った、走った。
やっとのことで警察署についたら、顔で意図が通じたらしく、すぐにパスポートをくれた。
やるじゃんよー。
走りながら、もっと面倒なことを想像していたので、正直、見直した。
警察署の場所は奥まったところにあるので、今度はタクシーを拾うため、また走った。
朝なのであまりタクシーがおらず、寝ていたタクシーを起こして乗せてもらった。
いまいち起きていない運転手。片手タバコしてる余裕はないんだよー?
こいつ〜、マジ頼む。彼がやる気を出すよう「必死の祈りのポーズ」であおったが届かず、終止マイペース運転で空港に到着。
お〜。出発30分前を切っているー!
さらにトルコリラを2人共持っていない為、€でも$でも支払いに苦労させられる。
友人は支払い交渉を、私はチェックインを、なんたる連係プレ〜イ。
出発20分前、ついにチェックイン完了。
お情けなのかセーフなのか、とにかくこれで飛行機には乗れるのだ。ヤター!
が今度はゲートに行かねば。休んでいる暇はない。
別れの挨拶は10秒もなかった。
この時の私は、感謝の気持ちと安堵の気持ちでいっぱいだった。
もうホント、いっぱいいっぱいとはこのこと。
お礼の言葉を口にしたら、不覚にもあふれてしまった。
想定外の涙の別れ。
友人の最後の言葉が身にしみる。
「本当に、
無事に帰って来てね。」
今日から一人旅。始まる。